PSF経営とナレッジ・リーダーシップ

PSF(プロフェッショナル・サービス・ファーム)経営の基本概念(抄)

詳しくは『脱「でぶスモーカー」の仕事術 なぜ“わかっていてもできない”のか』の解説「知識時代におけるリーダーの実践経営学」(by 紺野登)をご覧ください!

ナレッジワーカー組織としてのPSF(Professional Service Firm) 

 PSFとは独立した「個」であるプロフェッショナルが、組織的に働くことのできる企業である。コンサルティング会社では、経営陣であるパートナーが雇い入れたプロフェッショナルとしてのコンサルタントにチームで事にあたらせ、顧客の問題を解決する。設計事務所であれば、建築家とパートナーが同様の関係を形成している。弁護士事務所でほぼ全員パートナーという場合もある。製造業であってもインハウスのデザイン部門も、個々のデザイナーとマネジャーといった関係がある。人間的関係性がマネジメントの基礎となる。プロフェッショナルな人々は、雇用された特定の職種の業務記述にとらわれることなく、また自分の力を目先の問題に使い果すことなく、長期的な視点で切磋琢磨しつつ、腕を磨きながらベストを尽くすことが求められる。プロスポーツ組織もこれに似ている。

PSF経営の利益方程式

 ナレッジワーカーのグループや組織を動かすには、その「衛生面」と「健康面」を気遣う必要がある。「衛生面」とはマージンと人材時間活用度を指す。これらの要素は、企業の利益を支える部分(衛生的であることは基本である)である。これらの要素を高める、つまりコスト効率を高め、人材の回転を上げていけば利益が生まれるが、それは徐々に限界を迎えるだろう。本来は短期的にしか効果を生み出さない要素だ。したがって、その「衛生管理」が課題となる。一方「健康面」とは料率とマネジメントのうまさだが、これらは簡単に上げることはできない。それは、サービスの質の高まりやリーダーシップの向上が問われるからだ。しかし、この健康面の要素こそ、PSFにサステイナブルな利益をもたらすのである。

財務に直結する従業員満足度

 以上のようなPSFがいかに財務的成果に資するかは次の因果モデルによって説明される。メイスターの研究によれば、PSFの財務的成果に最も貢献するのは顧客に提供するサービスと顧客との良好な関係である。これを成り立たせているのは、企業としての高いサービスの基準(たとえば企業のミッションやモットー)と、何よりも従業員満足度である。これはまさにナレッジワーカーの自己選択性の原則を反映した結果である。自己選択した業務であれば、コミットが高く、満足度も高いのである。

顧客との関係性

 顧客との関係がPSF経営の最重要基点となる。ただそれは、何でも顧客の言いなりになるとか、顧客利益第一主義を意味してはいない。より全体的な観点から、顧客のことをケアするような立場、姿勢がPSFには求められる。たとえば部下であるコンサルタントと顧客の接点の質が良好かについてパートナーは常に気を配らねばならない。同じように建築事務所なら、まず顧客との関係を最重視し、そのうえで設計士の仕事を顧客関係という視点からケアしていくことが肝要である。

2009(c)禁無断転載 本ページはDavid Maisterの許可を得て紺野登及びKIRO (http://www.knowledgeinnovation.org)が『脱「でぶスモーカー」の仕事術』のために制作しました。

脱「でぶスモーカー」の仕事術
トム・ピーターズが「プロフェッショナル・サービス企業経営の師」と仰ぐ、メイスターの最新作

PSFとは基本的には独立した「個」であるプロフェッショナルが、組織的に働くことのできる企業である。本書はプロフェッショナル・サービス・ファームに関わる人々のために書かれたものだが、冒頭で触れられているように、メーカーも含む多くの業種の人々に大変有意義なものとなっている。会計事務所やコンサルティングファーム、シンクタンクや広告会社やリクルート・サービスなどだけでなく、たとえば、メーカーの新事業開発プロジェクトチーム、研究所、デザイン部門などにも有意義だろうし、製薬会社のMR(営業)、ソリューション営業、ITサービス業(システムインテグレーター)、建築事務所、デザイン事務所、あるいは公共サービスからNPO、そしてもちろんスポーツジムやホテル、歯医者、葬祭業等々、顧客との直接的関わりを通じて価値を生み出すことを狙い(戦略)とする多くの人々(マネジャー)にとって、感動的な発見(あるいは耳が痛い経験)をもたらすだろう。

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